急がないが重要な経営課題をインターンシップのテーマに【分科会③】

 分科会③では一般社団法人福岡中小企業経営者協会常務理事で九州インターンシップ推進協議会専務理事の古賀正博氏と石川樹脂工業株式会社専務取締役の石川勤氏をスピーカーとして招き、「これからのインターンシップに求められるものとは? 〜企業と学生の協働から職を創るインターンへ〜」をテーマに意見交換しました。ファシリテーターは徳島大学特任准教授の川崎克寛氏が務めました。

1dayは企業説明、成果を求めるなら長期で

 川崎氏はまず、有効性の高いインターンシップとは何かという話題から議論をスタートしました。古賀氏は、九州インターンシップ推進協議会では学生の学びを中心に考えているとした上で、「最近は1dayインターンシップが流行しているが、我々は最低でも5日間、一番多いものでは2週間実施し、プロジェクト型でできるだけ現場に近い体験ができるようにパッケージ化している」と現状を紹介しました。

 5年前から半年以上にわたるプロジェクト型の長期インターンシップに取り組み、採用にもつなげている石川氏は自らの体験を踏まえ、「1dayでは単なる企業説明になってしまう。半年くらいのインターンシップであれば、学生から具体的な成果を得られるので企業にとってもメリットが大きい」と述べました。

 これに対して川崎氏が「学生に取り組んでもらうプロジェクトは、経営課題として緊急度は低いが重要度が高いものがよいのでは」と提起すると、石川氏は賛意を示した上で、デジタルツールの活用など若者が長けている領域でプロジェクトを切り出す方が学生も取り組みやすく、企業も成果が得られやすいとの見解を示しました。

大学と企業を結ぶコーディネーターの育成が課題

 こうした議論を受けて古賀氏は今後、プロジェクト型のインターンシップを増やしていきたいと意欲を語ったほか、「インターンシップのプログラムを開発する際は、大学側と企業側の関係者、そしてインターンシップ協議会の3者が密にコミュニケーションを取れるといいものになる」との考えを示しました。

 これについて川崎氏が「3者を結ぶコーディネーターの育成が課題になっている」と話すと、古賀氏も同意した上で「大学からは4年間はアカデミックに勉強させたいという雰囲気を感じるが、社会に触れることで、自分に不足していることに気付き、学びの動機付けになる」と延べ、大学側がもっと積極的に関わってほしいと要望しました。

 一方、日頃からコーディネーターをよく利用しているという石川氏は「インターンシップを希望している学生全員に会うことはできないし、当社のことを一人一人に説明するのも難しい。そのため当社と学生をマッチングしてくれたり、一緒にプログラムを開発してくれたりするコーディネーターの存在は重要」とその必要性を強調しました。また、「実践型のインターシップでは学生の心が折れそうになる場面もあり、そういった時にゼミの先生が相談に乗ってくれれば大きな成長につながる」と大学教員の積極的な関与を呼び掛けました。

経営層が関わることが成功の鍵

 続いて自らもコーディネーターとして8カ月の長期インターンシップに携わる川崎氏が最初の数カ月はインプットの時期で何も起きないが、その後、学生にもターボがかかって成果が出てくるという経験談を紹介した上で、学生に変化を促すためのこつやインターンシップを成果につなげるためのポイントについて両氏に尋ねました。

 石川氏は「学生にはインターンシップの期間に指示を待たずに自分で考え、実行できる力を身に付けてほしい。そのためにはプロジェクトを3日から1週間で成果が出るレベルのタスクに分解して達成させ、小さな成功体験を積み重ねることで自らアウトプットする訓練をしている」と述べたほか、「プロジェクトは企業にとって新しい取り組みであり、すぐに結果が出ないことも覚悟しなければいけない。だからこそ、経営陣自身が関わらなければ成功しない」と力を込めました。

 古賀氏は企業内のメンターの重要性を指摘し、「全部指示するのではなく、学生を信じて考えさせるといったコーチングはもちろん、メンター自身が学生を受け入れることで企業にどのような化学反応が起きて、成果が得られるかという仮説を持っていることが大切」と言及しました。

企業は学生の受け入れを、コアを磨き上げる機会に

 最後に川崎氏が企業にとってのインターンシップの意義について問いかけると、石川氏は「コロナ禍においても日々変化をしている企業はやはり強い。変化するためには新しい人材が必要で、これからの不確実な社会において採用、育成が企業戦略のコアであり、ベストな人材を採るためにはインターンシップが欠かせない」との認識を示しました。

 古賀氏は「企業にはインターンシップをいいきっかけと捉え、自分たちのコアコンピタンスを磨き上げてほしい」と述べたほか、九州の企業の知財活用プロジェクトに全国各地の大学生がオンラインで参加した事例を紹介し、地域だけでなく、日本全国そして全世界のリソースを活用する視点の重要性についても指摘しました。

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【動画】これからのインターンシップに求められるものとは?